憧れの海外生活!?ブラジルからの食レポを通して知りたい、この世界のこと。

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一回の食事でも、社会のすがたが見えてきます。
「海外に住んでみたい」と、子どもの頃からばくぜんと抱いていた憧れ。
33歳にして結婚という形で叶ったのが、ブラジルでの生活です。

永住ビザを取得して、引っ越してきてまだ3週間。
右も左も分からない、スタートしたばかりではあるけれど、
「生活」の中ではたくさんの喜しいことの一方で、
やりきれなさや戸惑いも感じています。

朝市からパン屋に向かう途中。近所の道です。

近所を散歩中。

 

 

このブログには、引っ越してきてから訪れたレストランのレポートをいくつかあげています。

これらは、実際に「あぁ、美味しい!楽しい!」と思ったので、ぜひ色んな方にシェアしたいなと思いました。

ただし、それだけでは片付けられない思いも同時にあって。

何かというと、私は、ブラジルの階級社会にとまどっています。
ブラジル社会はその歴史背景もあって、格差が激しいです。

 

ブラジル社会は、金持ち、中間層、中間層よりやや貧困層、貧しい地区に住む貧困層に大きく分類される。その中で、中間層は、苦労して大学を出て、働き、パソコン購入してネットにつなぎ、車や家を買い、ブラジルの中でもやっと地位を確立したグループになる。そして現在のブラジルを支えているのがこの中間層なのだ。

(出典:『ブラジル その文化と歴史』浜岡 究著 2016.8.23 Amazon Services International, Inc.)

それで、単刀直入にいうと、私は「やや金持ち寄りの中間層」の暮らしをしています。日本人の多くは、ブラジル社会に照らし合せてみるとそうなると思います。

私は日本では、会社員として収入があり、満足に生活ができていまして。年収は300〜500万円の間です。独身でしたし、余裕もありました。そうなると食事ひとつとっても、いろーんなことを体験できたのです。

会社員時代の食事。

日本での食事。

例えば、リッツカールトンやパークハイアットなどのラグジュアリーなホテルでの食事も、1ヶ月間、ほかで無駄遣いをしなければ食事代を貯められました。一杯500円位するコーヒーも、欲しければ毎日飲めます。日によっては、昼と夜、2回飲むこともあります。

一方で、一杯320円の立ち食いうどんも大好き。コンビニのおにぎりも、110円でこんな美味しいもの食べられるなんて(昆布)!と感激します。

そんな選択肢の広さを、何とも思わず無邪気に過ごしてきました。

日本での食事。

日本での食事。

 

それが一旦ブラジルに来てみると、それは「やや金持ちよりの中間層」の暮らしになるんです。別記事でご紹介したアルゼンチン料理のANCHOは、価格帯や立地から考えて「中間層以上向け」のレストラン。

一方、朝食を食べたパン屋は、「中間層よりやや貧困層向け」。そのパン屋にやや金持ちよりの私が行き、無邪気に喜ぶと、私は地元のコミュニティに溶け込めた気がして嬉しいのですが、はたから見るとどうでしょう?「サンマって美味しいんだ!」と言った「目黒のサンマ」の殿様にもなりかねない。そう思ったので、お店の外観や他のお客さんの様子を撮影することはしませんでした。

パン屋にもいろいろあって、中間層以上が通うパン屋もあります。価格が上がって、店構えやお皿などにこだわりが出て来ます。私はそちらも好きです。もし日本から友人が来てくれたら、こちらにお連れするぶんには問題ない。前述のパン屋も美味しくてぜひ案内したいけれどその場で、はしゃいでは欲しくない。、、、こんな感覚を持っています。

日本から来た私はどちらのお店にも行くことができ、「わぁ!美味しい!」など思えますが、それは金銭的な余裕があるからです。ファンシーな方のパン屋に行く金銭的余裕がない層の人々もいます。「そこを自覚しての言動をしなければいけない。」というか、「自覚できる賢さが欲しい」と、こちらに来て思うようになりました。

なぜならば「階層社会というのは、個人ががんばればどうにかなるような問題ではなさそうだ。」ということが、この地に身を置いてみると見えてきたからです。

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私は今まで日本で「私ががんばれば収入は上がる」という前提で生きてきました。個人の努力で、資格をとったり、語学力を身につけたりすることで、さらなるチャンスへ挑戦できる、そんな社会で生きてきました。

こちらではその前提が成り立たないことが多々ある。生まれた時点で、スタート地点が違う。勉強をがんばろうっていったって、お腹が空いていたらどうやって集中できるだろう。そんなやるせないことが見えてきました。

「私ががんばったからできた」と思っていたこと、例えば、国内外を旅行したり、色んな人と出会って刺激を受けたりなんていうことは、もちろん私自身が行動したぶんもあるけれど、それ以前のそもそもの部分で「たまたまラッキーな場所に生まれたからだ。」ということをこちらに来て初めて思いました。

今までアメリカやフランス、韓国、中国に滞在経験があります。ですが、「食事」という毎日のあたりまえのことを通して、こんなに社会の姿が見えてくるということはブラジルに来て初めて経験しました。今はそれにまだ戸惑っています。

 

例えば、フェイジョアーダという豚肉と豆の煮込み料理。ブラジル料理には欠かせない、みんなが大好きな料理があります。実際にとっても美味しいです。私は義母の手作りのものや、ブラジリアで一番美味しいと言われているレストランのフェイジョアーダを食べたことがあります。簡単なレシピで作ったこともあります。

しかし今はまだ、「美味しいー!」と発信することが、できないでいます。フェイジョアーダを紹介するよりも、まず先にブラジルのことをもっと知りたいと思っているからです。

この料理の成り立ちは諸説あるようでして、一つは植民地時代に奴隷としてつれてこられたアフリカの人々によって考案されたというもの。それを知った時、私はとてもショックでした。

「そうだ。この国はかつて植民地で、奴隷制をしいて農場経営をしていたんだ。」

「歴史を振り返ってみると、現代のこの階層社会はそこに由来していそうだ、、、。」

「この国の代表的な料理を、今、私がただ『美味しいよ!』って紹介できる?」

、、、できん。今はまだ手が出せない。
と、とたんに、暗い気持ちになっちゃったんです。

でもそんなのおかまいなく、フェイジョアーダのレストランでは、たっくさんのブラジルの方々が楽しそうに食べていて。その光景を見て、

「私にはまだ分からないことだらけだ、、、」

とあぜんとしました。

2012-10-18 06.09.10

ブラジル暮らしでは、食を通して自分の視野をひろく&ふかく。少しずつでも拡げて行きたいと思います。そう思うと、やっぱり少しずつでもこちらの言葉をしゃべって、この地の人と会話しなきゃなりませんね。言葉=文化。今は英語でなんとか暮らしていますが、それだと出会うものが限られます。

 

以上が、こちらに来て3週間経った時点での正直な思い。

これからも、出会った食の歓びや、食材のめずらしさなど発信していきます。
前途どうなることか、分かりませんが、ひとつひとつ。
どうぞ引き続き、お楽しみください!

SLEEPY CITY BUGS

 

 

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